この世界の片隅に

 

 

 

アニメーション映画「この世界の片隅に

この映画はクラウドファンディングを利用し、こうの史代 原作の漫画を絶対に映像化したい

という制作者側の元へ、それを絶対に完成させてほしいという有志が集まった。

その数3374名。

最終的に集まった3912万1920円もの資金でパイロットフィルムが作られ、東京テアトルほか企業の

出資が決まった。

いわば、スタート時点から多くの伴走者を得ていた映画といえる。

 

私が鑑賞した平日昼間の回でも立ち見客が出ており、老若男女すべての世代が映画館へ足を運んでいる

という印象であった。

 

 


あらすじ

18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。

良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。

呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港

としていた。

見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。

夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。

隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。

配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には

好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。

ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。

またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な

想いを抱える。

1945(昭和20)年3月。

呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。

それでも毎日は続く。

そして、昭和20年の夏がやってくる――。

 

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会


 

 

 

たんたんと、主人公すずの日常の物語だった。

やがて戦争がこの「日常」を阻んでいき、1945年の夏に何が起こるか。

それを知っているのは、観客である私達だけだった。

どんなに悲しいことが起きたとしても、生活はつづく。

まっすぐ、まっすぐ、すずの日常を描くことによって、非日常である「戦争」が入ってくることが

憎くて仕方なくなる。

強いメッセージを言葉で発していなくても、体の真芯で受け止めるものがあった。

私は広島に生まれ育ったので、戦争体験者のお話や目を背けたくなる映像や写真も見てきた。

でも、近くて遠い話でしかなかった。

本当にそんな時代があったのかと。

この映画はタイムマシーンに乗ってすずの生きた世界を体験させてくれた。

はじめてこの世界を自分のものとして感じることができた。

 

エンドロールの終わりに流れていく、クラウドファンディングに参加した方々全員のお名前が

「すず!がんばれ!」

と言っているようで涙が止まらなくなった。

 

劇場の外へ出て、ふうっと大きく深呼吸をし、今日はすべての予定をとり止めて足早に家へ帰り、

家族のためにふわふわの白飯を炊こうと思った。